犬の椎間板ヘルニアについて

椎間板ヘルニアとは、脊椎の間にある椎間板物質が飛び出して、脊髄を圧迫し痛みや麻痺などを生じる病気です。

椎間板ヘルニアには、変性した髄核が線維輪を破って飛び出し脊髄を圧迫するハンセン1型(ミニチュアダックスなどの軟骨異栄養型に多く、多くは若齢で急性に発症します)と、線維輪が盛り上がって脊髄を圧迫するハンセン2型(非軟骨異栄養型に多く主に加齢による)があります。

変性した髄核が線維輪を破って飛び出し脊髄を圧迫するハンセン1型タイプ

線維輪が盛り上がって脊髄を圧迫するハンセン2型タイプ

Small Animal Surgery 5th より

症状は?

椎間板物質による脊髄の圧迫で痛みや、麻痺が出る場合が多いです。椎間板ヘルニアの起きる部分(頸部、胸腰部)によって症状の部位も異なってきます。

・腰や首を痛そうにする

・ふらつく

・足が動かない

・排尿障害

などがみられます。

グレード

椎間板ヘルニアは重症度には、頸部ヘルニアで3段階、胸腰部ヘルニアで5段階に分けられます。

頚部椎間板ヘルニア

グレードⅠ 頚部痛のみ見られる

グレードⅡ 起立可能な不全麻痺を呈する

グレードⅢ 起立不可能で横になっている。

胸腰部ヘルニア

グレードⅠ 背部痛のみを呈する

グレードⅡ 後肢は動くが、フラフラしている。

グレードⅢ 歩行は不可能だが、後肢の感覚は残っておりわずかに動かすことができる

グレードⅣ 歩行が不可能で、後肢は全く動かせず皮膚の痛覚も消失している

グレードⅤ 歩行不能で完全麻痺。深部痛覚を含めた全ての感覚が消失している。

神経症状が重度になってくると排尿障害も生じてきます。

検査方法は?

・スクリーニング検査  椎間板ヘルニア以外の疾患を除外するために行います。

例)血液検査、超音波検査、レントゲン検査など

・神経学的検査  動物の状態や、歩行、姿勢反応、脊髄反射、脳神経の機能などを見ていきます。

・CTやMRI検査(全身麻酔が必要)  CTは主に手術計画を立てるために、MRIは神経や血管、腫瘍などの軟部組織を描出することに優れているため、正確に椎間板ヘルニアと診断するために用います。

治療方法は?

大きく内科療法(保存療法)と外科療法(手術)の分けることができます。

内科療法(保存療法)

歩行可能な場合は適応になります。主にケージレスト(安静)と薬物療法(痛み止めやステロイド)により治療を行います。

外科療法(手術)

グレードが重度の場合や、内科療法で治療が難しい場合に圧迫物質をとる手術を行います。

頚部では主にベントラルスロット(腹側減圧術)、胸腰部ではヘミラミネクトミー(片側椎弓切除術)を行いうことが多いです。脊髄圧迫物質の部位や量、動物への症状、年齢、持病等によって術式を選択します。

ベントラルスロット(腹側減圧術)

ヘミラミネクトミー(片側椎弓切除術)

※Small Animal Surgery 5th より

進行性脊髄軟化症

進行性脊髄軟化症とは椎間板が飛び出した時の脊髄神経のダメージが大きい場合、脊髄の病変が広がり、脊髄が死んでしまう状態です。一度発症すると72時間以内に急速に進行し、最終的には呼吸をするための神経も麻痺するため、呼吸ができずに亡くなることがほとんどです。グレード4ならびに5の10%前後で、「進行性脊髄軟化症」という致死的な病態へと進行すると報告されています。

まとめ

犬に椎間板ヘルニアが疑われるような症状が見られた場合は、早期治療が予後に影響することもあります。日頃から腰や首に負担がかからない生活を心がけるようにしましょう。

 



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