熱中症にご注意ください 〜予防法と応急処置〜|犬|猫|短頭種|フレンチ・ブルドッグ、パグ

今回はこの時期に多く見られる熱中症についてお話しします。

緊急の対応になることが多いため、まずは「まとめ」から掲載します。
熱中症が疑わしい場合は、まずは応急処置をおこない、動物病院に電話連絡して状況を伝えていただき、体を冷やしながら直ちに向かってください。


*熱中症ってどんな病気?

熱中症は、高温多湿な環境に長時間晒されることで高体温および脱水状態になることで全身に症状が現れます。熱中症になりやすい時期は6~8月が最も多く、全体の9割以上を占めていると言われています。体温調節の機能が低下している子や過度な運動には特に注意が必要です。発生頻度は、お散歩などで屋外に出る機会が多いで圧倒的に高いです。猫では犬ほど高くないですが、室内で過ごしていての発症が最も多いのでご注意ください。

*熱中症はどんなときになりやすいの?

「家の中で普通に過ごしている時」「お散歩をしている時」「家の中でお留守番中」「車での移動中」「家の外でお留守番中」「外で遊ばせている時」「家の中で遊ばせている時」などなど様々です。 犬や猫は体温調節が苦手なため、しっかりと予防と対策をして、万が一なってしまった時の症状を把握し、適切な初期対応ができるようにしておきましょう。

*熱中症はどんな症状がでるの?

【初期の症状】
活動が鈍くなる、パンティング(舌を出して開口しながらする激しい呼吸)、過度の唾液分泌(よだれ)、歯肉・舌・結膜などの充血、心拍が速いなど普通に落ち着いていられない息苦しさを感じるようになります。できればこの段階で体温を測定をしてください。体温測定は肛門(直腸温)で行うことが望ましいです。40℃を超える場合には熱中症の疑いが高いため、病院に一度ご相談ください。

【重症の場合】
ぐったりとして意識がない(虚脱)、ふるえ、嘔吐、下痢、けいれん発作などを生じる場合もあります。さらに、DIC(播種性血管内凝固症候群)という血管内で血栓を作る病気が続発し多臓器不全を起こし亡くなってしまうこともあります。

このように熱中症は放置すると重篤化し、命に関わることがあるので注意が必要です。


*熱中症の予防法

ペットを高温の環境においておかないことが最大の予防となります。

【屋外】
暑い季節の外出時刻には注意し、できるだけ早朝か夜の涼しい時間帯のお散歩を心がけてください。また、気温と同じく注意していただきたいのはアスファルトから放射される熱です。人と違い、地面から近いところを歩く犬は気温以上に熱を直接受けてしまいます。朝夕気温が涼しく感じても、お散歩の際にはアスファルトを触って確かめてみましょう。
また、外出する場合には、こまめな給水を心がけましょう。時には体表に水道水をかけ流し、さらに風を送りなどの気化熱を利用した簡易的な体幹冷却法を行ってみてください。特に頚部(喉から首にかけて)と体幹(胸、お腹全域、特に内股)に水道水をかけたり、水分を多く含んだタオルをかけて扇風機やうちわで扇いで風を送ってあげてください。



【室内】
夏場は、風通しをよくしても気温が高いと熱中症になります。エアコンを使い、暑い時期の室内の温度は26℃以下で維持するようにしてください。自分で居場所を自由に移動できるようにしてあげることも重要です。

【車内】
外気温が25℃を超えるような環境下では締め切った車の中においておくことは大変危険です。(活動的な犬や興奮しやすい犬の場合には、さらに低い気温でも熱中症のリスクがあります)。犬、猫のみで車で過ごさせることは極力控えてください。


*応急処置

熱中症は、いかに早く症状に気付き治療を開始できるかが重要です(90分以内)。
全身に常温の水道水をかけて冷却したり、水道水で濡らしたタオルなどで包み、涼しい場所で風を送り体の冷却に努めます。その後、動物病院に電話連絡して状況を伝えていただき、体を冷やしながら直ちに向かってください。

やってはいけない体の冷やし方

氷水に全身をつけるなど急激に冷却すると、抹消血管が収縮し、熱が逃げにくくなります。
体温が下がらずに高体温による各臓器への障害が進み逆効果となるため行わないでください。

*とくに注意が必要な犬、猫たち

犬、猫ともに短頭種はとくに注意が必要です。短頭種は気道が狭く、呼吸困難に陥りやすいため、命を落としてしまうほど重症になることがしばしばあります。

犬ではフレンチ・ブルドッグ、パグ、シーズーなど、猫ではペルシャ、エキゾチックショートヘア、ヒマラヤンなどがそれにあたります。

その他にとくに熱中症に注意が必要な場合

・肥満
・呼吸器疾患 
・循環器疾患(心臓病)
・腎臓病
・神経疾患(発作、四肢麻痺など)
・内分泌疾患(甲状腺機能亢進症(猫)、副腎皮質機能亢進症(犬)など)
・認知症

認知症の動物は、水を飲む場所がわからない、家具の隙間など閉所から脱出できない、あるいは長時間吠え続ける等の症状が見られ、体温上昇ならびに脱水症状を引き起こし易く、高温多湿の環境でなくても注意が必要です。


夏にペットとのお出かけを計画する際にはぜひ、熱中症の症状や対処法、予防方法を理解して楽しんでください。