猫の甲状腺機能亢進症について|獣医師が解説します

「最近、食欲はあるのだけど体重が減ってきている気がする」
「お水を飲む量が増えた」
「毛ヅヤが悪くなっている気がする」

もしかしたら猫の「甲状腺機能亢進症」という病気かもしれません。

最近食事の量は変わらないけど痩せてきていませんか?
今回の記事を最後まで読んでいただけたら甲状腺機能亢進症についてはばっちりです!

 

猫の甲状腺機能亢進症について

猫の甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう)は、高齢の猫に非常に多い内分泌疾患で、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることで全身の代謝が異常に亢進(=活発になりすぎる)してしまう病気です。
10歳以上の猫では約10〜15%が発症するといわれています。


原因は?

最も一般的な原因は甲状腺の良性の腫瘍と言われています。
約98%は良性の変化で、悪性腫瘍(甲状腺がん)は非常に稀です。

甲状腺が大きくなるとホルモンが過剰に作られ、体の代謝スイッチが常にオンの状態となります。
その結果様々な症状が出てきます。


主な症状

甲状腺ホルモンが増えすぎると、体のあらゆる機能がフル稼働してしまいます。そのため以下のような症状がみられます。

  • よく食べるのに体重が減る

  • 落ち着きがない、よく鳴く、夜中に歩き回る

  • 多飲多尿(よく水を飲み、オシッコが増える)

  • 毛づやが悪くなる、毛がボサボサになる

  • 嘔吐や下痢

  • 脈が速い、心臓の雑音、心筋症の進行

これらは「老化」と勘違いされることがあるため、中高齢の猫で体重減少がある場合は要注意です。


診断方法は?

 

甲状腺機能亢進症は、以下の検査を組み合わせて診断します。

● 血液検査

  • T4(総サイロキシン):最も基本となる甲状腺ホルモン

  • fT4(遊離サイロキシン):より感度の高いホルモン

  • 腎臓・肝臓の値:合併症の評価

● 血圧測定

高血圧があるかを確認することが非常に大切です。

● 心臓検査(必要に応じて)

超音波検査や胸部レントゲンで心臓の負担を評価します。


治療方法

猫の甲状腺機能亢進症には大きく3つの治療法があります。

・ 内科治療(抗甲状腺薬)

最も一般的で多くの猫で行われる治療です。

メリットは手軽に始められることですが、デメリットとして生涯投薬が必要、副作用が出ることがあります。

・放射性ヨウ素治療

放射性ヨウ素を体内に取り込ませ、異常な甲状腺組織だけを選択的に破壊する治療方法です。
1回の治療で治る可能性が非常に高いですが、対応施設が少ないのと、入院が必要になります。

・食事療法(ヨウ素制限食)

内服などは行わず、ヨウ素含有量を極限まで制限した食事で管理する方法です。
完全に療法食のみの生活になるため、管理が大変になるなどのデメリットがあります。


治療後に注意すべきことは?

甲状腺ホルモンが下がると腎臓の病気が隠れていたことが明らかになることがあります。
これは、高い甲状腺ホルモンが「代謝を上げて血流を増やす」ことで、一時的に腎機能がよく見えるためです。
治療開始後は必ず定期的な血液検査で腎臓の状態を確認する必要があります。


予後は?

適切な治療と管理によって、多くは良好な生活を長く送ることができます。

早期発見・早期治療が予後改善のポイントです。


まとめ

猫の甲状腺機能亢進症は、高齢猫に非常に多い病気ですが、
治療すればしっかりコントロールできる疾患です。

  • 「最近よく食べるのに痩せてきた」

  • 「夜に落ち着かない」

  • 「水をよく飲むようになった」

このような変化がある場合は、早めの検査をおすすめします。

 

 

 

 

 

 

 


 


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