犬猫の歯が割れてしまったとき(歯牙破折)について詳しく解説

■歯が割れる(破折)とは?
犬や猫の歯が強い力で欠けたり、根元から折れてしまうことを「歯牙破折」といいます。
小さな欠けから、根本まで大きく折れるケースまであり、見た目以上に痛みが強い病気です。
特に犬は固いものを噛む習性があるため発生しやすく、猫も落下事故やケンカで前歯や犬歯が折れることがあります。
■よく見られる原因

歯が割れる原因として以下のようなものがあります。
① 固すぎるおもちゃ・おやつ
・鹿の角
・ヒヅメ
・骨
・硬いプラスチックのおもちゃ
などは破折リスクが高い代表例です。
② 外傷(落下・衝突)
高い所からの落下、家具にぶつかる、交通事故など。
③ 不適切な噛みグセ
・ケージの鉄格子を噛む
・石、枝を噛む
④ 歯周病による歯の弱化
歯周病で支える骨が溶けていると、少しの刺激でも割れやすくなります。
■どの歯が多く割れるの?
犬猫ともに、以下の歯が最も破折しやすいとされています。
-
上顎第4前臼歯

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犬歯
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切歯
特に裂肉歯は、硬い物を噛むときに最も力がかかるため割れやすい歯です。
■破折するとどうなるの?
歯が割れると、次のトラブルにつながります。
①強い痛み
犬猫は痛みを隠すため、普通に食べてしまうこともありますが、実際にはかなり痛い状態です。
②感染(歯髄炎・根尖膿瘍)
割れた部分から細菌が歯の内部(歯髄)へ侵入し、炎症や膿が溜まります。
③目の下が腫れる(犬猫に多い)
上顎の奥歯が破折し感染すると、目の下がポコッと腫れる「瘻管(ろうかん)」ができます。
④慢性鼻炎
猫では、上顎の犬歯・奥歯の感染が鼻腔へ抜け、慢性の鼻水・くしゃみに繋がることがあります。
■破折の種類

破折は、見た目だけでは重症度を判断できません。代表的には以下の分類があります。
①エナメル質だけが欠けた浅い破折
痛みは少ないが、進行すると感染のリスク。
②象牙質まで達する
しみる・痛みが出やすい。
③歯髄(神経)が露出する破折(重度)
最も強い痛みがあり、早急な治療が必要。
露出した部分が赤/黒/ピンクに見える。
■歯が折れた時に見られる症状は?
- 片側だけで噛む
- おもちゃを噛みたがらない
- 食べ物をこぼす
- よだれが増える
- 口を触られるのを嫌がる
- 口臭が強くなる
- 目の下が腫れる
「気づいたら欠けていた」ということも多く、見つけた時点で動物病院での診察が必要です。
■治療方法は?

① 抜歯
感染している、亀裂が深い、歯根が大きく損傷している場合は抜歯が最も確実です。
メリット
- 痛みや感染が確実になくなる
- 再発がほぼない
- 処置時間が比較的短い
デメリット
- 歯を失う
- 場所によっては噛む能力に影響がある(ただし多くの犬猫は問題なく生活できます)
② 歯内治療
歯を残したい場合に行う方法です。
歯髄を除去し、根管をきれいにして薬剤を詰め、最終的に詰め物で封鎖します。
メリット
- 歯を温存できる
- 噛む機能が維持できる
デメリット
- 専門的な設備・技術が必要
- 症例によっては再治療が必要
- 麻酔時間がやや長くなる
※特に犬の犬歯・裂肉歯などは根管治療が有効なケースも多いです。
■予防するには?
① 硬すぎるおやつ・おもちゃを与えない
「犬の歯より硬いもの」は危険です。
目安:爪で押して跡がつかない物はNG。
② 歯みがきを習慣化する
破折した歯の感染リスクを減らせます。
③ ケージや鉄柵を噛む癖を見直す
④ 顎や顔の怪我に注意する
高いところへのジャンプなどの外傷リスクを避けましょう。
■まとめ

犬猫の歯が割れるのは珍しくなく、見た目よりも深刻な問題を引き起こします。
- 破折=痛い・感染している可能性あり
- 治療は「抜歯」か「根管治療」の2択
- 放置すると目の下の腫れ・鼻炎・重い痛みにつながる
- 見つけたら早めに動物病院へ
適切な治療で痛みは大きく改善され、日常生活の質も戻ります。
当院では歯科治療にも力を入れています。「歯を急に痛がりだした」などの症状がある場合にはすぐにご相談ください。
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