【症例1】犬の僧帽弁閉鎖不全症 ステージB1 チワワ

犬で最も多い心臓病の僧帽弁閉鎖不全症の症例の紹介です。

10歳、去勢済みの男の子のチワワさん、かかりつけで聴診をしてもらい、心雑音があるが、投薬が必要かどうか微妙な状態だと言われたため投薬の判断をして欲しいとのことで来院されました。

お話を聞くと、現段階では症状は特になく、元気に過ごせているようです。

検査内容は血圧測定、心電図検査、胸部X線検査、心臓超音波検査です。

血圧は最高165mmHg、最低115mmHg 、平均133mmHgとやや高血圧でした。

血圧測定(写真はドプラ法による測定)

心電図は特にリズムなどに問題はなく、洞調律という正常な心電図でした。

正常洞調律の心電図

胸部X線検査では心臓の大きさは普通で、肺や気管にも大きな問題はなさそうでした。

右を下にして横になってもらって撮ったレントゲン
(ホームページ用に画面をiPhoneで撮影したら画質が粗くなってしまいましたが実際はもっと鮮明です)
伏せのポーズで撮ったレントゲン

心臓超音波検査では僧帽弁逆流がありましたが、心臓の大きさは正常であり、心臓への負荷も少ないと判断されたためステージB1と診断しました。

僧帽弁逆流が緑や青、黄色が混ざったモザイクパターンで表示されています。逆流量はそこまで多くありません。
左心房の大きさを見るためにLA/Ao比を測定する断面
左心室の大きさを見るためにLVIDDNを測定する断面

このように、心臓は現時点では治療の必要はなく、定期的な経過観察で良いと判断いたしました。ただし、今回の測定値は投薬の基準となる値に近いので、3ヶ月くらいで再度超音波の検査を受けにに来ていただくことにしました。

また、高血圧が続くようであれば降圧剤を開始する必要があり、治療の必要性を判断するために2週間〜1ヶ月で血圧を再度測定しに来ていただくようにお話ししました。

今後は、心臓の上の部屋(左心房)が大きくなってLA/Aoという数値が1.6を超え、下の部屋(左心室)も大きくなってLVIDDNという数値が1.7を超えたあたりでステージB2となりピモベンダン(強心剤)が適応になります。

一生続けることになるお薬なので、お薬を適応とする時期はしっかり判断させていただいています。

ちなみに症状がない時からでも超音波の検査で上記の基準を満たせばお薬を始めていただく必要があるので、家で症状が出るのを待っていては治療開始が遅れてしまいます。

症状がなくても、心臓に雑音のある子は定期的に検査を受けに来てくださいね。

犬の僧帽弁閉鎖不全症(慢性弁膜症)に関して、詳しくは以下もご参照ください。