犬猫の歯周病のお話

歯周病とは?

歯周病は、歯を支える組織(歯肉、歯槽骨、歯根膜)が炎症を起こす病気です。それにより、歯の根っこを支えるあごの骨がとかされてしまいます。人間同様、わんちゃんや猫ちゃんもこの病気にかかりやすく、適切なケアが必要です。特に高齢の子たちでは歯周病が進行しやすく、早期発見と治療が重要です。

歯周病の原因

歯周病の主な原因は、歯垢と歯石です。以下にそのプロセスを説明します。
1. 歯垢の形成: 食事の後、口腔内の細菌が食べ物のカスと結びつき、歯の表面に粘着性のある歯垢が形成されます。
2. 歯垢から歯石へ: 歯垢が長時間放置されると、唾液中のミネラルと結びつき硬化し、歯石となります。歯石は歯ブラシで取り除くことが難しく、細菌の温床になります。
3. 炎症の進行: 歯石が歯肉に接触すると、歯肉炎を引き起こします。これが進行すると、歯肉が炎症を起こし、歯周ポケットが形成され、さらに歯周病が進行します。
歯周病が進みますと、歯科専用レントゲンにおいて以下のような骨融解が認められます。

右下あごの奥歯のレントゲンです。

赤で囲った部位が歯周病により溶かされたあごの骨の部位です。歯根に対し半分以上溶けていることがわかります。

歯周病の症状

歯周病の症状 初期の歯周病は目立った症状が少ないため、見過ごされがちです。しかし、進行すると次のような症状が現れます。
口臭: 口腔内の細菌が繁殖することで強い口臭が発生します。
歯肉の赤みと腫れ: 健康な歯肉はピンク色ですが、炎症が進むと赤く腫れます。
歯の動揺: 歯を支える組織が破壊されるため、歯が動揺します。
食欲不振: 痛みや不快感から食欲が減退し、食事を嫌がることがあります。
膿の排出: 歯周ポケットから膿が出ることがあります。

歯周病の影響

歯周病の影響 歯周病は口腔内の問題だけでなく、全身の健康にも影響を及ぼす可能性があります。
1. 心臓病: 口腔内の細菌が血流に乗って心臓に達し、心内膜炎などを引き起こすことがあります。
2. 腎臓病: 同様に、細菌が腎臓に影響を与え、腎臓の機能不全を引き起こすリスクがあります。
3. 糖尿病の悪化: 歯周病の炎症は血糖値のコントロールを難しくし、糖尿病を悪化させる可能性があります。

歯周病の予防

歯周病を予防するためには、日々のケアと定期的な獣医のチェックが欠かせません。
1. 歯磨き: 毎日の歯磨きが最も効果的な予防策です。犬猫用の歯ブラシと歯磨き粉を使用し、優しく磨いてあげましょう。初めは嫌がるかもしれませんが、徐々に慣れさせることが大切です。
2. デンタルケア製品の利用: 歯磨きが難しい場合は、デンタルガムやデンタルスプレーなどを利用すると良いでしょう。これらの製品は歯垢の形成を抑える効果があります。
3. 適切な食事: ドライフードは歯垢が付きにくく、歯の健康を保つのに役立ちます。特にデンタルケアを目的とした特別なフードも販売されています。
4. 定期的な獣医師の検診: 少なくとも年に一度は獣医師による口腔内検査を受けましょう。早期発見と治療が重要です。

歯周病の治療

歯周病が進行してしまった場合、以下のような治療が必要です。
1. スケーリングとポリッシング: 歯石を取り除き、歯の表面を滑らかにする処置です。これにより、細菌の再付着を防ぎます。
2. 抜歯: 重度の歯周病で歯が保存できない場合、抜歯が必要です。抜歯後は痛みや炎症が軽減され、全身の健康も改善されます。
3. 抗生物質の投与: 歯周病が進行している場合、抗生物質を使用して細菌感染を抑えることがあります。

適切なスケーリング(歯石除去)は治療になります。
表題の写真のわんちゃんは歯科レントゲン含めた検査において抜歯の必要はありませんでしたので、丁寧に歯垢歯石除去を行っています。

before

after

歯周病と生活の質(QOL)

歯周病を予防し、適切に治療することで、犬猫の生活の質(QOL)は大いに向上します。口腔内の健康は、食事を楽しむこと、痛みのない生活を送ることに直結しています。また、歯周病が引き起こす全身の健康問題も予防でき、長寿を全うするためにも重要です。

日常ケアのポイント

日常的なケアを続けるためには、以下のポイントを押さえると良いでしょう。
1. 習慣化: 歯磨きやデンタルケア製品の使用を毎日の習慣にしましょう。少しずつ慣れさせることが大切です。
2. 観察: 口腔内を定期的に観察し、異常がないかチェックします。早期発見が鍵です。
3. 獣医師との連携: 定期検診だけでなく、気になることがあればすぐに獣医師に相談しましょう。

まとめ

犬猫の歯周病は、予防と早期発見が重要な病気です。日々のケアを怠らず、定期的に獣医師のチェックを受けることで、大切な家族の健康を守りましょう。歯周病は放置すると全身の健康に悪影響を及ぼす可能性があるため、しっかりとしたケアを心がけることが大切です。家族の一員である愛犬、愛猫が、健康で幸せな生活を送れるよう、サポートいたします。お気軽にご相談ください!

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荻窪桃井どうぶつ病院
獣医師 山本倫大