スケーリング(歯石除去)とは?

皆さん、こんにちは。
新年明けましておめでとうございます。今年もよりよい医療を提供できるよう、スタッフ一同精進してまいります。
どうぞよろしくお願いいたします。

今回は基本に立ち戻り、どの動物病院さんでも一般的に行われているスケーリング(歯石除去)についてお話ししたいと思います。
わんちゃん、ねこちゃんでお口のトラブルの代表例として、歯周病が挙げられます。
その原因となるのが歯垢(プラーク)です。
歯垢が歯に残った状態を放置していますと、歯石に変化し、歯ブラシでは落ちなくなってしまいます。
その歯石に変わるまでに
犬:3-5日
猫:1週間
と言われています。
これを防いでいくには、自宅でのデンタルケアが必須となります。
ですが、人間もそうですが、どんなに上手に歯磨きをしていたとしても、実は落とせていない歯垢・歯石は溜まっていきます。
歯の表面は基本ツルツルしているのに対し、歯石の表面はざらついているため、歯垢が溜まりやすくなります。
ツルツルの木のテーブルと、ざらざらの木のテーブルの上で、飲み物をこぼしたときに、掃除しやすいのはツルツルのほうですよね。
ですので、人間も動物も歯石が溜まってきたら、スケーリング(歯石除去)をする必要があります。
これを放置してしまいますと、歯周病が悪化していく環境が出来上がり、歯周病が悪化していきます。

口腔内の健康を保つために
人間は3か月に1度、スケーリングをすることが推奨されています。
動物の場合は1年に1度の全身麻酔下でのスケーリングが推奨されています。
ただ人間のほうでも100%歯石を取れているかというと、そんなことはありません。
歯石を取りきるということは非常に難しいことです。目に見えていないだけです。

人間と動物の大きな違いは全身麻酔をかけないと、動物の場合はちゃんとしたスケーリングができないことです。
超音波の振動で歯の表面、歯と歯肉の隙間の歯石を落としていきますので、痛みを伴う処置だからです。
全身麻酔はその痛みや、動物に恐怖・不安を与えないという目的もあります。
また治療を行う際に大事なのが、歯周病の進行を確認する歯科専用レントゲンですが、これを撮る際全身麻酔が必須です。

歯石を丁寧に除去していくには、優しい力で歯を傷つけないように行うことがとても大切です。
ですが、動物病院で行われているスケーリングは、強い力で歯石を落としているところが大半だと思われます。
歯石が早く落とせるからです。その結果、歯の表面が傷ついてしまい、歯垢・歯石が付きやすい状態が出来上がります。
歯は硬いものですが、思っている以上に繊細な部位です。
せっかく全身麻酔までかけて行ったのに、歯を傷つけていたら元も子もないですよね。
また動物の歯は硬いものを噛んでもすぐに欠けたり、割れたりしてしまいます。
それに加え、歯科専用レントゲンを撮らない動物病院もまだまだたくさんあります。

飼い主の皆さまにはそのことをぜひ認識していただきたいと思っています。
私自身も勉強、処置をしていくにつれて、ちゃんとしたスケーリングを行うことがとても難しいことだと認識しています。
ここで言うちゃんとしたスケーリングとは、
・歯科専用レントゲンを撮る
歯石をなるべく取り残さない(目に見えていないところまで)
・歯を傷つけない(最難関です)
を指します。
まだまだこのようなことを言う獣医は少なく、スケーリング(歯石除去)は簡単に思われがちですが、とても繊細な作業だと思っています。
これからも丁寧な医療を提供できるよう、腕を磨いていきたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。

獣医師 山本倫大

スケーリング(歯石除去前)

スケーリング(歯石除去後)