犬の膝蓋骨脱臼(パテラ)について
犬の「パテラ」とは、膝のお皿の骨(膝蓋骨:しつがいこつ)が正常な位置から外れてしまう状態を指します。正式には「膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)」と呼ばれ、小型犬で特に多く見られる疾患です。
原因
膝蓋骨脱臼は主に次のような理由で起こります。
● 先天的(生まれつき)
-
脚の骨の角度の問題
-
膝の溝(滑車溝)が浅い
-
太ももの筋肉の付き方のバランス
多くの小型犬ではこの先天的要素が関係していると言われています。
● 後天的(成長後・外傷など)
-
激しいジャンプや落下
-
フローリングでの滑りやすい環境
-
肥満による負担増加
どんな症状が出るの?
脱臼の程度や犬の性格によって症状は様々です。
-
後ろ足をスキップするように片足だけ浮かせて歩く
-
脚をつったように一瞬だけケンケンする
-
走った後に急に足を上げるが、すぐに戻る
-
両足にある場合は歩き方がぎこちない
-
重度では常に跛行(びっこ)や痛みが出る
軽度の場合は痛みを出さずに見逃されていることも多い疾患です。
グレード分類(重症度)

膝蓋骨脱臼は一般的にグレード1〜4に分類されます。
-
グレード1: 膝蓋骨は普段は滑車溝に収まっていますが、手で押すと脱臼する状態
-
グレード2: 膝蓋骨は普段は滑車溝に収まっていますが、後ろ足を曲げた時に頻繁に脱臼する状態
-
グレード3: 膝蓋骨は常に脱臼した状態です。手で押すと一時的に滑車溝に戻る状態
-
グレード4: 膝蓋骨は常に脱臼した状態で、手で押しても元の位置に戻すことができない状態
グレードが高いほど治療として手術が必要になります。
放っておくとどうなる?
軽度の脱臼でも、長期的には以下のような問題につながることがあります。
-
膝の炎症や痛みの悪化
-
関節炎の進行
-
膝の変形
-
歩行障害
-
骨や韌帯の損傷(前十字靭帯断裂など)
早期の発見・管理がとても重要です。
治療方法
1. 保存療法(手術なしでの管理)

-
体重管理
-
関節にやさしい運動
-
サプリメント
-
すべりにくい床環境の整備
-
痛みや炎症がある場合は消炎鎮痛薬の使用
2. 手術療法

グレード2後半〜4では手術が推奨されます。
手術では以下のような処置を組み合わせて行います。
-
膝蓋骨がはまる溝を深くする(滑車溝造溝)
-
膝の周囲のゆるみや緊張を調整する
-
脛骨の突出部(脛骨粗面)を正しい位置に移動する(脛骨粗面転移術)
また、大腿骨や脛骨の矯正骨切りや滑落防止スクリューなどの術式を用いることもあります。
犬種や年齢、足の骨の変形の程度によって最適な方法を選択します。
予防のためにできること
-
肥満に注意し、適正体重を保つ
-
フローリングには滑り止めマットを敷く
-
過度なジャンプをさせない
-
爪を短く保ち、滑りにくくする
-
子犬のうちからの適度な筋力トレーニング
まとめ
膝蓋骨脱臼(パテラ)は小型犬に多い疾患で、軽度のうちは気づきにくいこともあります。しかし放置すると関節炎や歩行障害につながるため、早期発見と適切な管理がとても重要です。
「歩き方が少しおかしい」「時々片足を上げる」などの症状があれば、早めの受診をおすすめします。
荻窪桃井どうぶつ病院/杉並動物循環器クリニックでは、公式ライン・インスタグラムにて飼い主さん向けの情報を発信しています。




