【新しい検査】FGF23(腎臓)/尿中シスタチンB(尿細管障害)について

新しい2つの検査についてご紹介します。
FGF23(腎臓)/尿中シスタチンB(尿細管障害)です。
10月~11月に実施する秋の健康診断キャンペーンでも検査可能ですので、気になる飼い主様は当院獣医師にご相談ください。

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慢性腎臓病の検査 FGF23とは?


慢性腎臓病が進行すると食事のリン制限が必要ですが、早すぎる制限は筋肉量の低下を招きます。この検査は、体内のリンバランスを調整するホルモンを測定し、リン管理を始めるべき最適なタイミングを判断する指標となります。適切な時期の管理は、腎臓の負担を和らげ、健やかな生活を守るために重要です。

FGF23検査でわかるつのこと

①リン制限開始時期の指標に

血中リン濃度の上昇は慢性腎臓病(CKD)の後期にならないと認められません。現在腎臓病療法食によるリン制限開始が推奨されているStage2の症例群の犬のうち、血中リン濃度の上昇は19%でのみ認められました。一方、血中FGF23濃度の上昇は73%でみられ、FGF23が早期のリン・カルシウム代謝異常を捉えることができる可能性が示唆されました。FGF23の評価は、早期のCKDにおけるリン制限開始時期の指標、食事療法の効果判定として用いられることが期待されます。

健常犬およびCKD罹患犬ステージ別の血清リン濃度(左)と血清FGF23濃度(右)の比較(n=75)
J Small Anim Pract.2020 Oct;62:基準範囲上限を赤線で示した。

②生存期間の予後因子として

猫における研究によると、血中FGF23濃度が3,000pg/mL未満の群と比較し、「3,000-10,000pg/mL」および「10,000pg/mL以上」の群で生存日数の中央値が有意に短いことが確認されました。このことよりCKD診断時にFGF23濃度を測定することは、生存期間の推定に有用であり、予後因子としての意義が示唆されます。

猫におけるCKD診断時の血中FGF23濃度と生存期間の関係(n=214)
J Vet Intern Med 2015;29:1494-1501

食事療法開始検討フローチャート

早期の食事療法に関する懸念

CKDの早期における食事療法開始は以下のような弊害が懸念されます。

①早期のリン制限により起こり得る弊害

■ 特発性高カルシウム血症の発現または悪化
■ 低リン血症の発現

②早期の蛋白制限により起こり得る弊害

■ 低蛋白食に伴う筋肉量の低下

食事療法を最大限に活用するために、今後は食事療法開始の指標が求められます。FGF検査はその指標になります。

※FGF検査で紹介したグラフの出典:富士フイルム株式会社

 

尿細管障害のバイオマーカー 尿中シスタチンBとは?


血液検査の数値に異常が現れる前から、腎臓の尿細管はダメージを受けていることがあります。この検査は、尿中のタンパク質を測ることで、症状のない隠れた腎障害を早期に発見します。見た目は元気でも体内で静かに進む病気を見つけ、手遅れになる前のケアにつなげることができます。

尿中シスタチンB検査が重要な3つの理由

①従来の血液検査よりも早く異常発見

腎臓病は従来の血液検査(クレアチニンやSDMAなど)の数値が上がる前に、すでに尿細管でダメージが始まっていることがあります。尿中シスタチンBは、こうした「隠れた腎臓のダメージ」を早期に発見する手がかりになります。また、尿中シスタチンBの数値が高いほど、腎臓へのダメージが大きいことを示しています。


(左)犬の急性腎臓病(AKI)におけるシスタチンBの早期検出Yerramilli et al. VCNA 2016を改変
(右)犬の急性腎臓病(AKI)重症度別のシスタチンBYerramilli et al. VCNA 2016を改変

②将来の予後を予測

(左)1ヶ月以内に死亡したAKI犬はシスタチンBが高値
(右)AKI診断時のCreでは予後判定ができない


犬の急性腎臓病(AKI)重症度別のシスタチンBGordin et al. VetSci 2024を改変

③慢性腎臓病の進行度を予測


慢性腎臓病(CKD)Stage1の犬シスタチンBと進行度Segev et al. JVIM 2023を改変

どんな時に検査をするか?

1.定期的な健康診断に(従来検査との併用で、より詳しく腎臓の状態を把握可能)
2.CKD Stage1の進行度の予測に
3.尿蛋白のある子の尿細管障害度合の把握に
4.各種イベント時のチェックに(麻酔・手術・腎障害リスクのある薬物使用中など)

CreSDMA検査との使い分け

クレアチニンやSDMAは「腎機能」を、尿中シスタチンBは「腎臓のダメージ」を評価します。クレアチニンやSDMAが正常でも尿中シスタチンBが高い場合、「まだ腎機能は保たれているが、腎臓の細胞には既にダメージが蓄積している」ことを示唆します。将来的に腎機能が低下するリスクが高いことを意味します。尿中シスタチンBによって、食事管理や治療を始めるべきかどうかを判断し、病気の進行を遅らせることが可能になります。

※尿中シスタチンBで紹介したグラフの出典:IDEXX Laboratories「腎臓病の早期発見と診断の最前線 腎臓バイオマーカーの役割と尿中シスタチンBの可能性」


10月~11月に実施する秋の健康診断キャンペーンでも検査可能ですので、気になる飼い主様は当院獣医師にご相談ください。

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