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病気のお話Disease Column

尿路上皮癌(移行上皮癌)とは?|症状、検査、治療法など獣医師が詳しく解説

CATEGORY: 腫瘍科

「おしっこに血が混じっている」
「何度もトイレに行くのに、少ししか出ていない」
「膀胱炎の治療をしたのに、また症状が出てきた」

このような症状がみられる場合、膀胱炎や尿路結石だけでなく、尿路上皮癌(にょうろじょうひがん)という腫瘍が隠れていることがあります。
尿路上皮癌は、犬の膀胱や尿道などに発生する悪性腫瘍です。初期には膀胱炎とよく似た症状がみられるため、発見までに時間がかかってしまうこともあります。

今回は、犬の尿路上皮癌について、特に発生することの多い膀胱や尿道のケースを中心に、症状・検査・治療について解説します。

尿路上皮癌とは?

「尿路上皮」とは、膀胱や尿道、尿管、腎盂など、尿の通り道の内側を覆っている組織です。この尿路上皮から発生する悪性腫瘍が尿路上皮癌です。
以前は「移行上皮癌」という名称が広く使われていましたが、現在では尿路上皮癌という名称が用いられることが増えています。

犬では特に膀胱や尿道に発生することが多く、膀胱では尿道につながる「膀胱三角」と呼ばれる部分にできることがあります。
この場所に腫瘍が大きくなると、尿の通り道を狭くしてしまい、進行すると尿が出にくくなることがあります。

膀胱炎と尿路上皮癌の違いは?

尿路上皮癌で注意したいのが、初期の症状が膀胱炎や尿路結石と非常によく似ていることです。
代表的な症状には、

  • 血尿が出る
  • 何度もトイレに行く
  • 少量ずつしか尿が出ない
  • 排尿に時間がかかる、いきむ
  • 排尿時に痛そうにする

などがあります。

膀胱炎として治療を行うことで、一時的に症状が軽くなることもあります。

治療をしても血尿や頻尿を繰り返す場合や、短期間で症状が再発する場合には、膀胱炎だけでなく腫瘍など別の病気が隠れていないか詳しく調べることが大切です。
また、腫瘍によって尿道が狭くなると、最終的には尿がほとんど出なくなることもあります。

尿路上皮癌ではどんな検査をする?

尿路上皮癌が疑われる場合には、一つの検査だけで判断するのではなく、尿検査や画像検査、細胞の検査などを組み合わせて診断していきます。

尿検査

尿の状態を確認し、細菌感染や尿路結石など、血尿や頻尿を起こすほかの病気がないか調べます。
尿中に腫瘍を疑う細胞が認められることもありますが、尿検査だけで尿路上皮癌と確定できるとは限りません。

超音波(エコー)検査

膀胱の内部を確認します。
膀胱壁が部分的に厚くなっていないか、膀胱内にしこりがないか、尿管や腎臓に異常がないかなどを確認します。また、周囲のリンパ節の腫れなども同時に評価します。
ただし、エコー検査だけでは炎症やほかの腫瘍との区別が難しい場合もあります。そのため、疑わしい病変が見つかった場合には追加検査を行います。

レントゲン・CT検査

尿路上皮癌は進行すると、リンパ節などへ転移する可能性があります。
レントゲン検査では主に胸部などへの転移を確認します。さらに詳しく調べる必要がある場合にはCT検査を行います。
CTでは腫瘍の広がりや周囲組織との位置関係、リンパ節や肺などへの転移をより詳しく評価できます。手術を検討する際にも重要な検査になります。

カテーテルを用いた細胞診

腫瘍の種類を調べるためには、病変から細胞を採取して顕微鏡で確認する「細胞診」を行うことがあります。
ただし、尿路上皮癌が疑われる病変に対して、お腹の外側から直接針を刺して採取する方法は、腫瘍細胞が針を刺した経路に広がる「播種」のリスクが問題になることがあります。
そのため、尿道からカテーテルを挿入して病変から細胞を回収する方法などが選択されます。

BRAF遺伝子検査

犬の尿路上皮癌では、BRAF遺伝子の変異が高い割合で認められることが知られています。
尿などを利用して検査できるため、尿路上皮癌が疑われる場合の診断を補助する検査として利用されています。
ただし、BRAF変異が検出されない尿路上皮癌もあるため、陰性だからといって完全に否定できるわけではありません。ほかの検査結果と合わせて総合的に判断します。

尿路上皮癌の治療法は?

尿路上皮癌は、発生する場所によっては腫瘍を完全に切除することが難しく、内科治療を中心に治療するケースが多い腫瘍です。
治療では、腫瘍の大きさや発生部位、転移の有無、排尿状態などを確認しながら、その子に適した方法を選択します。

消炎鎮痛薬(NSAIDs)

尿路上皮癌では、消炎鎮痛剤のNSAIDsに腫瘍の増殖を抑える作用が期待できることから治療に使用されることがあります。
単独で使用する場合もあれば、抗がん剤と組み合わせることもあります。
一方で、腎臓や消化管への副作用が起こる可能性があるため、血液検査などで状態を確認しながら使用する必要があります。

抗がん剤治療

抗がん剤によって腫瘍を小さくしたり、進行を遅らせたりすることを目指します。
尿路上皮癌ではNSAIDsと抗がん剤を組み合わせて治療することもあります。
使用する薬剤や治療間隔については、腫瘍の状態だけでなく、年齢や持病、腎機能なども考慮して決定します。

分子標的薬などによる治療

近年では、がん細胞が増殖する仕組みに作用する薬についても研究が進んでいます。
犬の尿路上皮癌についても新しい治療薬の研究が行われており、従来の抗がん剤とは異なる治療選択肢が検討されるようになっています。
ただし、すべての犬で効果が期待できるわけではないため、使用する場合には腫瘍の状態やこれまでの治療経過を踏まえて判断します。

外科手術

腫瘍が膀胱の一部に限局していて、重要な尿路を温存しながら切除できる場合には手術が検討されることがあります。また、腫瘍によって尿の通り道が塞がれてしまった場合には、排尿経路を確保するための処置が必要になることがあります。

こんな症状があれば早めに受診を

血尿や頻尿だけでなく、何度も排尿姿勢をとるのに尿がほとんど出ていない場合には注意が必要です。
特に尿が全く出ない状態は緊急性があります。
尿路上皮癌以外にも尿路結石などで起こることがありますが、そのままにすると腎臓や全身状態に重大な影響を及ぼす可能性がありますので、早めに動物病院を受診してください。

まとめ

犬の尿路上皮癌は、膀胱や尿道など尿の通り道に発生する悪性腫瘍です。
初期には血尿や頻尿など、膀胱炎とよく似た症状がみられるため、発見が遅れてしまうことがあります。
特に、膀胱炎の治療をしても症状を繰り返す場合や、血尿がなかなか改善しない場合には注意が必要です。

尿路上皮癌は治療が難しいこともありますが、腫瘍の状態に合わせて抗がん剤やNSAIDs、外科治療などを検討することができます。

毎日のおしっこの変化は、ご家族だからこそ気づける大切なサインです。
「いつもの膀胱炎と少し違うかも」「治療しても何度も繰り返している」など、気になる症状がありましたら、お早めにご相談ください。

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