犬の免疫介在性溶血性貧血(IMHA)とは?|症状・原因・治療について獣医師が詳しく解説
CATEGORY: 内科
「最近なんとなく元気がない」
「散歩に行きたがらなくなった」
「歯ぐきがいつもより白い気がする」
このような症状がみられる場合、貧血が起きているかもしれません。
貧血にはさまざまな原因がありますが、その中でも注意したい病気のひとつが免疫介在性溶血性貧血(IMHA)です。
IMHAは、自分自身の免疫が誤って赤血球を攻撃してしまうことで、赤血球が壊され、重度の貧血を引き起こす病気です。
今回は、犬の免疫介在性溶血性貧血について、症状や原因、検査、治療について解説します。
免疫介在性溶血性貧血(IMHA)とは?

赤血球には、全身に酸素を運ぶ大切な役割があります。
通常、古くなった赤血球は一定のサイクルで処理され、新しい赤血球へと入れ替わっています。
ところがIMHAでは、何らかの理由によって自分自身の免疫が正常な赤血球を異物と判断し、攻撃してしまいます。
その結果、赤血球が通常よりも早いスピードで壊される「溶血」が起こり、新しい赤血球を作るスピードが追いつかなくなると貧血が進行します。
重症になると命に関わることもあるため、早期の診断と治療が重要な病気です。
免疫介在性溶血性貧血(IMHA)の原因は?
IMHAは、大きく分けると、明らかな原因が特定できないものと、別の病気などがきっかけとなって起こるものがあります。
原因が特定できないケースも少なくありませんが、感染症や腫瘍、炎症性疾患などが関連して発症することがあります。また、薬剤などとの関連が疑われる場合もあります。
そのため、IMHAと診断するだけではなく、背景に別の病気が隠れていないかを調べることも大切です。
免疫介在性溶血性貧血(IMHA)はどんな症状が出る?
IMHAでは貧血の程度や進行するスピードによって症状が異なります。
特に、
- 元気や食欲がなくなる
- 散歩や運動を嫌がる
- 歯ぐきや舌の色が白っぽくなる
- 呼吸が速くなる
- 尿の色が濃くなる
- 白目や皮膚が黄色っぽく見える(黄疸)
などがみられることがあります。初期には「なんとなく元気がない」「いつもより疲れやすそう」といった分かりにくい症状だけの場合もあります。
一方で、短期間で急激に貧血が進行することもあるため注意が必要です。
免疫介在性溶血性貧血(IMHA)の診断方法は?

まず血液検査を行い、赤血球の数や貧血の程度を確認します。
さらに血液を顕微鏡で確認したり、赤血球が凝集していないかを調べたりすることで、免疫によって赤血球が壊されている可能性を評価します。必要に応じて、赤血球に対する抗体を調べる検査などを行うこともあります。
同時に、血液検査やレントゲン検査、超音波検査などを組み合わせ、IMHAを引き起こす可能性のある病気が隠れていないかを確認していきます。
ひとつの検査だけで判断するのではなく、貧血が起きていること、赤血球が壊されていること、免疫が関与していることなどを総合的に評価することが重要です。
免疫介在性溶血性貧血(IMHA)の治療は?

治療の中心となるのは、赤血球を攻撃している免疫反応を抑えるための免疫抑制治療です。
一般的にはステロイドなどの薬を使用し、症状や治療への反応によっては、ほかの免疫抑制薬を組み合わせることがあります。
また、貧血が重度と判断される場合には、輸血が必要になることもあります。
治療によって状態が改善した後も、すぐに薬を中止するわけではありません。血液検査を行いながら状態を確認し、再発に注意しながら少しずつ薬を調整していきます。
また、IMHAでは貧血だけではなく、血栓症にも注意が必要です。
血管の中に血の塊ができることで血流が妨げられ、場所によっては重篤な状態につながる可能性があります。
そのためIMHAの治療では、貧血や溶血を改善するだけでなく、症例に応じて血栓を予防するための治療を行うことも重要になります。
状態によっては入院による集中的な治療や、頻回の血液検査が必要になることもあります。
治療後も定期的な検査が大切です
IMHAは治療を開始して状態が改善しても、再び症状が再発することがあります。
そのため、元気になったからといって自己判断で薬を減らしたり、中止したりすることは避けましょう。
定期的に血液検査を行い、赤血球の状態を確認しながら治療を続けていくことが大切です。
治療期間はその子によって異なります。長期間の治療が必要になることもありますが、状態を確認しながら少しずつ薬を調整していきます。
まとめ

免疫介在性溶血性貧血(IMHA)は、自分自身の免疫が赤血球を攻撃し、赤血球が壊されることで貧血を引き起こす病気です。
初期には元気や食欲がないなど、はっきりしない症状しかみられないこともあります。しかし、急激に貧血が進行したり、血栓症などの合併症を起こしたりする可能性もあるため、早期発見・早期治療が重要です。
「なんとなくいつもと違う」という変化も、大切な病気のサインかもしれません。
気になる症状がありましたら、お気軽にご相談ください。


