犬と猫の脾臓腫瘍について|症状・原因・検査・治療について獣医師が詳しく解説
CATEGORY: 腫瘍科
「健康診断で脾臓にしこりが見つかった」
「最近、元気や食欲がなくなってきた」
「お腹が急に膨らんできた」
このような場合、脾臓にできる腫瘍が関係している可能性があります。
脾臓は普段あまり意識することのない臓器ですが、血液の貯蔵や免疫、古くなった血球の処理など、さまざまな役割を担っています。
犬や猫では、健康診断の超音波検査などで脾臓の腫瘤が偶然見つかることもあります。
今回は、そんな犬と猫の脾臓腫瘍について、症状や種類、検査方法、治療、注意すべき症状について解説します。
脾臓はどんな臓器?
脾臓はお腹の中にある臓器の一つで、胃の近くに位置しています。
主な役割として、
・古くなった赤血球などの血球を処理する
・免疫反応に関与
・血液を一時的に蓄える
・血液中の異物や細胞を処理する
などがあります。
脾臓は生命維持に重要な働きをしていますが、病気などによって脾臓を摘出する必要が生じた場合でも、適切な管理のもとで生活することは可能です。
脾臓にできる腫瘍は?
脾臓に腫瘤が見つかった場合、すべての脾臓のしこりが悪性とは限りません。
良性のものや、悪性のものの中でもさまざまな種類があります。
画像検査だけでは良性か悪性かを判断することが難しく、最終的には摘出した脾臓を病理組織検査に提出して診断するケースが多いです。
犬で注意したい脾臓の血管肉腫
犬の脾臓に発生する悪性腫瘍として、特に知られているのが血管肉腫です。血管肉腫は血管の細胞から発生する悪性腫瘍で、脾臓に多く発生します。
進行すると腫瘍が破裂して腹腔内出血を起こすことがあり、突然状態が悪化するケースもあります。
また、悪性度が高く脾臓に腫瘍が見つかった際には心臓や肝臓などに転移を起こしていることもあります。
そのため、脾臓に腫瘤が見つかった場合には、脾臓だけを見るのではなく、全身の状態を確認することが重要です。
脾臓腫瘍ではどんな症状が出る?

脾臓腫瘍は、初期には目立った症状がないことがあります。健康診断などで偶然見つかるケースも少なくありません。
腫瘍が大きくなったり、全身への影響が出たりすると、
・元気がなくなる
・食欲が低下する
・体重が減る
・疲れやすくなる
・お腹が膨らんでくる
・嘔吐する
・歯ぐきが白くなる
などの症状がみられることがあります。
ただし、これらの症状は脾臓腫瘍だけに特徴的なものではありません。
脾臓の腫瘤がある場合に注意したい合併症の一つが、腫瘤からの出血です。
脾臓は血液と関係の深い臓器であるため、腫瘤が破裂すると腹腔内に大量の血液がたまることがあります。
出血量が多い場合には、急激に血圧が低下し、ショック状態になることもあります。
脾臓腫瘍の検査方法は?

脾臓の異常を調べるためには、いくつかの検査を組み合わせます。
血液検査
貧血の有無や血小板数、炎症の有無などを確認します。
脾臓から出血している場合には、貧血が認められることがあります。
ただし、血液検査だけで脾臓腫瘍の良性・悪性を判断することはできません。
超音波検査

腹部超音波検査では、脾臓の大きさや内部の状態、腫瘤の位置や形状などを詳しく確認できます。
同時に肝臓やリンパ節など、他の臓器の状態を確認することもできます。
レントゲン検査

胸部や腹部のレントゲン検査を行い、他の臓器への影響や転移を疑う所見がないか確認します。
CT検査

より詳しい評価が必要な場合には、CT検査を行うことがあります。
CTでは、腫瘤の位置や周囲の臓器との関係、リンパ節や他の臓器への転移などを確認するのに役立ちます。
細胞診検査
細い針を刺して細胞を採取する「細胞診」が行われることもあります。
ただし、脾臓には血液が多く流れているため、出血のリスクなどを考慮する必要があります。
脾臓腫瘍の治療法は?

脾臓腫瘍が疑われる場合は、診断と治療を兼ねて脾臓摘出術を行うことがあります。摘出した脾臓は病理検査に提出し、腫瘍の種類や良性・悪性を確認します。
脾臓を摘出しても、多くの犬や猫は通常の生活を送ることができます。ただし、悪性腫瘍の場合は、腫瘍の種類や転移の有無に応じて、化学療法などの追加治療を検討することがあります。
治療方針は、腫瘍の種類や進行度、年齢、全身状態などを総合的に判断して決定します。
健康診断で脾臓のしこりが見つかったら?
脾臓の腫瘤は、症状がない状態で健康診断の超音波検査などから発見されることがあります。
「元気も食欲もあるのに、腫瘍があると言われた」と驚かれる飼い主さんもいらっしゃいます。
しかし、脾臓の腫瘤が見つかった場合でも、すぐに悪性腫瘍と決まるわけではありません。
大きさや形状、数、血流、他の臓器の状態などを確認しながら、経過観察が適しているのか、追加検査や手術を検討するのかを判断します。
まとめ

犬や猫の脾臓には、良性の病変から悪性腫瘍までさまざまな病気が発生します。
特に犬では血管肉腫などの悪性腫瘍が知られており、腫瘤が破裂して腹腔内出血を起こすことがあります。
一方で、脾臓にしこりが見つかったからといって、必ずしも悪性腫瘍とは限りません。
超音波検査や血液検査などで状態を確認し、必要に応じてCT検査や病理組織検査などを行いながら、治療方針を検討します。
「健康診断で脾臓にしこりが見つかった」
「最近、お腹が大きくなってきた」
「急に元気がなくなった」
「歯ぐきが白くなっている」
このような変化がある場合は、お早めに動物病院へご相談ください。
特に、突然ぐったりする、歯ぐきが白い、呼吸が速い、お腹が急に膨れるといった症状は、腹腔内出血など緊急性の高い状態が隠れている可能性があります。すぐに診察を受けることをおすすめします。


