犬の股関節脱臼とは?症状や原因、治療について
CATEGORY: 整形外科
「急に後ろ足を上げて歩くようになった」
「散歩中に足を痛がり、その後まったく足を着かなくなった」
「ソファから飛び降りたあとから、歩き方がおかしい」
このような症状がみられた場合、股関節の脱臼が原因かもしれません。
犬の股関節脱臼は、交通事故や転倒、落下などの強い外力によって起こることが多い一方で、もともとの股関節の形や関節のゆるみが関係している場合もあります。
今回は、犬でみられる股関節脱臼について、症状や原因、診断、治療について解説します。
股関節脱臼とは?
股関節は、骨盤と大腿骨をつないでいる関節です。
通常は、関節包や靱帯、周囲の筋肉などによって大腿骨頭が適切な位置に保たれています。
しかし、強い衝撃などによってこれらの組織が損傷すると、大腿骨頭が寛骨臼から外れてしまうことがあります。これが股関節脱臼です。
関節が完全に外れる「脱臼」に対して、一部だけがずれている状態は「亜脱臼」と呼ばれます。
急に足を着かなくなったら要注意

股関節が脱臼すると、後ろ足に体重をかけることが難しくなるため、突然3本足で歩くようになることがあります。
特に外傷による脱臼では、「さっきまで普通に歩いていたのに、急に足を上げた」という経過をとることが多いです。
主にみられる症状には、
- 後ろ足を地面につけない、または引きずる
- 歩き方がおかしくなる、強く痛がる
- 股関節周囲を触られるのを嫌がる
などがあります。
ただし、脱臼してから時間が経過している場合には、痛みが目立たなくなることもあります。
また、股関節脱臼だけでなく、骨折や膝の靱帯損傷などでも似た症状が出るため、見た目だけで判断することはできません。
股関節脱臼はなぜ起こる?

股関節脱臼の原因として特に多いのが、交通事故、落下、転倒、激しい運動などによる外傷です。
一方で、強い外力がなくても脱臼してしまう犬では、股関節そのものに問題が隠れていることがあります。
代表的なのが股関節形成不全症です。
股関節形成不全症では、股関節の発育や形態に異常があり、関節が不安定になることで、長期的には関節炎や痛みにつながります。こうした股関節の不安定性がある犬では、正常な股関節と比べて脱臼が起こりやすくなります。
股関節形成不全症は、特にラブラドール・レトリーバーやゴールデン・レトリーバー、バーニーズ・マウンテン・ドッグなどの大型犬で多いと言われています。
そのほか、筋肉量の低下などによって股関節を支える力が弱くなっている場合にも、股関節の安定性に影響することがあります。
股関節脱臼の診断方法は?

「後ろ足を上げている」という症状だけでは、股関節脱臼と断定することはできません。
膝蓋骨脱臼や前十字靱帯断裂、骨折など、同じように後ろ足を使わなくなる病気があるためです。
診察では、まず歩き方や立ち方を確認したうえで、触診によって股関節の位置や動き、痛みの有無などを確認します。
そのうえで、レントゲン検査を行い、股関節が正常な位置から外れているかを確認します。
また、外傷が原因の場合には、股関節だけでなく骨盤や大腿骨などに骨折がないかを確認することも重要です。
場合によっては、より詳細な骨の形態や周囲の状態を評価するためにCT検査を行うこともあります。
股関節脱臼の治療法は?
股関節脱臼の治療では、脱臼した関節を元の位置に戻すことが基本になります。
手術をせずに整復する方法
脱臼してから比較的早い段階で、骨折などの大きな損傷がなく、股関節自体の状態に問題がない場合には、非観血的整復を検討します。
全身麻酔下で大腿骨頭を本来の位置へ戻し、その後、包帯などを用いて後ろ足を固定し、損傷した関節周囲の組織が治癒するのを待ちます。
うまく安定すれば手術をせずに治療できる可能性があります。
一方で、整復後に再び脱臼することも珍しくありません。報告によって差がありますが、非観血的整復後の再脱臼率は50%以上とする報告もあります。
そのため、整復後は安静をしっかりと守り、再脱臼が起きていないか経過を確認することが大切です。
再脱臼を繰り返す場合は手術を検討

一度整復しても再び脱臼してしまう場合や、最初から関節を安定させることが難しい場合には、外科手術が選択されます。
手術方法は、股関節を残して安定化する方法と、股関節そのものを再建・置換する方法などに分けられます。
犬の年齢や体格、股関節の状態、骨折の有無、脱臼してからの期間などを考慮して、適した方法を選択します。
股関節を温存することが難しい場合には、大腿骨頭頸部切除術によって痛みの原因となる部分を取り除く方法があります。また、条件によっては人工股関節置換術を検討することもあります。
自宅でできる予防・再発対策

股関節脱臼は、すべてを予防できるわけではありません。
特に外傷による脱臼では、日常生活の中で突然起こることもあります。一方で、股関節に不安定性がある犬では、生活環境を整えることが重要です。
フローリングなどの滑りやすい床では、犬が走ったり方向転換したりした際に足を滑らせることがあります。マットを敷くなどして、足元が滑りにくい環境を作ってあげましょう。また、体重が増えるほど関節にかかる負担も大きくなるため、適正体重を維持することも大切です。
股関節形成不全症などが疑われる場合には、運動量や生活環境について獣医師に相談し、その犬に合った管理方法を考えていきましょう。
「足を着かない」は様子を見すぎないことが大切
犬が突然後ろ足を使わなくなった場合、股関節脱臼だけでなく、骨折や靱帯損傷などさまざまな病気が考えられます。
特に、
- 急に足をまったく着かなくなった
- 落下や転倒、事故のあとから歩けなくなった
- 強い痛みや腫れがある
といった場合には、早めに動物病院を受診しましょう。
股関節脱臼では、脱臼してからどのくらい時間が経過しているかも治療方法を考えるうえで重要です。
まとめ
犬の股関節脱臼は、交通事故や転倒などの外傷によって突然起こることがあります。また、股関節形成不全症など、もともとの股関節の状態が関係している場合もあります。
治療では、まず脱臼した股関節を元の位置に戻すことを目指しますが、再脱臼することもあるため、その後の安静や経過観察も重要です。
「足を上げているだけだから少し様子を見よう」と思っていても、実際には股関節脱臼や骨折などが隠れていることがあります。
後ろ足の使い方に急な変化がみられた場合には、早めに診察を受け、原因を確認してあげましょう。


